SALU / COMEDY
これは新世代ラッパーSALUがファーストアルバム 「IN MY SHOES」で思い描いた幻想の世界の中に入った後の物語である。不安に揺れる今の時代でさえ、SALUの詩情にくるまれて、美しく変容する。
人の一生はまるで一本の映画のよう。 人がただひたすらに生きる様はまるで喜劇。
これは新世代ラッパーSALUがファーストアルバム 「IN MY SHOES」で思い描いた幻想の世界の中に入った後の物語である。
◆「情熱と冷静」、「体験と俯瞰」がせめぎあう多角的な視点から綴られる歌詞を、他の追随を許さない日本人離れしたリズム感と浮遊感あるフロウから放つSALUの音楽は、聴くものの胸の奥を突き上げ、揺さぶる。また彼のLIVEパフォーマンスに、ある者は熱狂し、またある者は言葉を失う。その動揺は記憶から離れず、さらにSALUの世界の奥深くに誘われる。
◆『In My Shoes』のシーズン2ともいえる本作は、『In My Shoes』で描いた俯瞰で見た幻想の世界の中に入ることで描かれた作品だ。
例えるなら、ヒューマンドラマあり、ラブストーリーあり、ホラーあり、サスペンスあり、SFありの短篇映画集のような、コンセプトアルバムになった。「人の一生はまるで一本の映画のよう(「WEEKEND」抜粋)。
人が目の前の生活をただひたすらに生きる様はまるでコメディ。辛く悲しいこと(「MOON CHILD」)、幸せな時間(「SPACEBOY」、「GOODTIME」)、心の葛藤(「BREAK MY SHADOW」、「NEW BALANCE」)などは、当人にとってはいつでも真剣だが、他人から観測すれば面白く可笑しい。」と語るSALUが、今作のアルバムタイトルを『COMEDY』と名付けたことは意味深い。時には自分を追い込んでストイックに物事を考える性分であるSALUが、そんな自分をコメディアン(「COMEDY」)や鎮痛剤(「PAINKILLER」)になぞらえ、リリシストとしての宿命を背負う苦悩や悲哀、喜びをユーモアとウィットをもって伝えようとしているように感じられる本作はいまを生きる若者の気持ちを代弁し、その道標になる。不安に揺れる今の時代でさえ、SALUの詩情にくるまれて、美しく変容する。