JAB / Untitled
特別なライセンスを手にした男の一人、JAB。前作から僅か1年、セカンドアルバムが完成 ! !
キャッチーなコピーも、センセーショナルなトピックなども存在しない。際立ったバック・グラウンドを持たずともマイクを握り続ける意味と説得力、そして確かなスキルの裏付け、つまりは優れたMCにとって不可欠な、特別なライセンスを手にした男の一人、JAB。前作から僅か1年、セカンドアルバムが完成 ! ! !
DTMの急速な普及で多くのMCにとってアルバム・リリースが容易となってはや数年、巷には有名無名を問わず、多くの録音物が溢れたことは周知の通りだが、供給過多からくる自然淘汰によって志半ばにして夢破れ、表現者としてのステージを人知れず、ひっそりと降りていった者は決して少なくはなかったはずだ。そんな過酷な時代にあっては自分だけの武器を手に入れた、タフなMCだけが次のステージのドアを開くことができる資格を手に入れる・・・自らのクルー「高槻POSSE」との共同名義でのアナログ・リリース、ファースト・アルバム「STANDARD PROCESS」(2010)と、玄人を唸らせる良質な作品を出す度、着実な進化を果たしてきたこのJABは紛れもなく後者であり、際立ったバック・グラウンドを持たずともマイクを握り続ける意味と説得力、そして確かなスキルの裏づけ、つまりは優れたMCにとって不可欠な、特別なライセンスを手にした男の一人だ。
この作品にあるのは、彼の特性を深く理解した優れた製作陣が繰り出す上質なサンプリング・ビートと丹念に推敲し、選び抜かれた真摯な言葉たち、そして確かなキャリアを経て鍛えられた、脂の乗り切った強固なフロウ。全てはこれまでの歩みの延長線上に位置し、そこには劇的なスタイルの変化もなく、キャッチーなコピーも、センセーショナルなトピックなども存在しない。しかし、職人が日々のルーティン化した鍛錬を黙々と繰り返し、緩やかな成長曲線を描いて高みへと達していくように、本作でJABが得た音楽面での上積みもまた堅実でいて隙がない。その進化の過程はこのヒップホップの世界において最も尊い意味を持つ言葉、「PROPS」を得るに充分すぎるものだと言えるだろう。
Text by 浦田威(ライター)
PROFILE :JAB
特殊なhighな土地、大阪/高槻市で育ち現在も生活し活動の拠点としている。時に痛々しいほど辛辣に、時に驚くほど深い愛に満ちた人間味とリアリティ溢れるありのままのスタンスで地元高槻を熱くする。第四土曜の主催イベントTSUKI(@高槻RUSH, DELTA, DUKE BAR) を中心に各地で土臭く熱いLIVEを展開。関西だけに留まらない現場でのLIVEは勿論、音源制作も積極的に行い無料配布DEMO CD[直視]、[どぶねずみZM]を各500枚バラ撒き、惜しまれつつも廃刊となったHIPHOP専門誌blastのDEMOコーナーにも掲載される。Da.Me.Records発信のコンピレーションCD[月刊ラップ]シリーズにどぶねずみ名義での単独楽曲やマイクリレーでの参加を経て、2007年に迷友DJ YONE with JAB名義で自身の楽曲を盛り込んだMIX CD[Sunday Carpenters]をTSUKI Recordings.からリリース。
2008年6月に、これまでとこれからの活動を結び付ける制作環境を核に、TSUKI Recordings.プロデュースによる自主制作音源[Scenery from here EP]をストリート流通でリリース。 その後、親交深い東のリリシスト: EI-ONEと自らのクルー: 高槻POSSEによる共同名義でのアナログ・リリースや、大阪シーンに根を張るSTUDIO COSMIC NOTESによるコンピレーションアルバムへの楽曲提供などヘッズの信用に値する幾多のアクションを経て、満を持してファースト・フル・アルバム[Standard Process](2010年2月発売予定)を完成させる。アルコールにまみれた独特の磁場が形成された街、高槻の街角を鮮やかに切り取った作品やLIVEは、特殊なバック・グラウンド、物語性などなくとも、揺るぎない信念と音楽への真摯な姿勢、そして豊かな才能を持った同志たちとの切磋琢磨のみによって、彼らだけのドラマ、言い換えれば極上の泥臭いHIPHOPが生まれ得ることを証明してくれるはずだ。